知らなかったでは済まない「パワハラの境界線(グレーゾーン)」について知っておこう
中小企業の経営者にとって、『パワーハラスメントの境界線(グレーゾーン)』を理解することは不可欠です。この境界線を誤解することで、組織内のトラブルや法的な問題が生じる可能性があります。
では、パワーハラスメントの境界線とは一体何なのか、その重要性と具体的な事例を解説します。経営者として知っておくべきポイントを見逃さないでください。
『パワハラ』の定義
厚生労働省では、職場で働く者に対し、次の3つの要素をすべて満たすものを『パワハラ』と定義づけています。
- 職務上の地位や人間関係などの優位性を背景として
- 業務上、必要かつ相当な範囲を超えた言動により
- 労働者の就業環境を害すること
つまり、「相手がパワハラだと感じたらパワハラ」ではありません。
『職場で働く者』とは
次の通り、職場で働くすべての者を指しています。
- 正社員
- 契約社員
- パート
- アルバイト
- 派遣社員
- 関連企業の社員
- インターン
『職務上の地位や人間関係などの優位性を背景』とは
被害者的立場の人が、行為者に対して抵抗や拒絶ができない関係のことを指します。
優位的な立場とは、決して上司から部下だけに起こるものではありません。パワハラは上司が権力を使って部下に対して身体的・精神的に追い込んでいくものだという認識は必ずしもそうではありません。パワハラは、あらゆる関係で起こる危険性があります。
- 上司から部下
- 先輩から後輩
- 正社員から派遣社員
- 部下から上司
- 後輩から先輩
- 経営層から社員
『業務上、必要かつ相当な範囲を超えた言動』とは
人格を否定する言動や目的から逸脱した言動が、業務上、必要でない言動に該当します。
- 「バカ野郎」「あほ」「のろま」「能無し」「給料泥棒」
- 「よくこんな奴と結婚したな、もの好きもいるんだな。」
- 「お前は太っているから、仕事が遅いんだ」といった、体型を引き合いに出すこと
- 「三流大学だから、仕事がのろいんだ」というような学歴などに触れてバカにすること
- 「マネージャーが勤まると思っているのか」「マネージャーをいつ降りてもらっても構わない」
(裁判上問題とされた言動の一例)
教育が脅育に変わらないように
業務上の必要がある指示命令
-
次の事柄はパワハラでしょうか
- 電話対応が苦手なのにクレーム応対を命じられた
- 簡単すぎる雑務を依頼された
- 昨年よりも高い売上目標が設定された
-
すべてパワハラではない
その指示内容が、指示された人にとってやりたくない仕事だったり、不得意な仕事であってもパワハラではありません。
厚生労働省が定める『パワハラ6類型』
パワハラ6類型
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(不要なことや不可能なことの矯正・仕事の妨害)
- 過小な要求(程度の低い仕事の命令や仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
パワハラかどうかの判断において考慮すべき要素
- 言動の目的
- 言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む言動が行われた経緯や状況
- 業種・業態
- 業務の内容・性質
- 当該行動の態様・頻度・継続性
- 労働者の属性や心身の状況
- 行為者との関係性
まとめ
チェックポイント
- 人格否定の発言をしていないか
- 指導方法が、必要で相当な方法だったか
部下を持つ管理職の方は、この2点を常に意識して指導していく必要があります。管理職の方は部下から「それ、パワハラです」と言われて怯んでしまわないように、正しい知識を身に着けておくことが大切です。