『花手水』誕生の秘密(長岡京市商工会ブランディングセミナー)

イベント概要

  • 日時:令和4年9月25日(日)
  • 場所:柳谷観音「楊谷寺」 〒617-0855 京都府 長岡京市浄土谷堂の谷2
  • 参加者:長岡京市商工会員24人
  • 内容
    • 第一部 ブランディングセミナー「楊谷寺、この8年」
    • 第二部 懇親会(いっぷく亭さんのお弁当)

柳谷観音「楊谷寺」とは

『空海はその湧き水を眼病に効く独鈷水として広めた』

伝承によれば、弘仁2年(811年)、楊谷寺を参詣した空海は、堂の傍らの湧き水で、眼のつぶれた小猿を抱いてその眼を懸命に洗っている親猿を見かけると、小猿のために17日間の祈祷を行いました。すると満願の日に小猿の眼が見事に開いたといいます。

柳谷観音は、眼病平癒の祈願所として、平安時代より天皇家公家を初めとする眼病に悩む人々に信仰されてきました。

『四季を感じ、心を観じる 癒しと信仰の聖地』

西の清水とも謳われた楊谷寺には天皇家ゆかりの歴史ある品も多く、境内諸堂を巡っていただくことでたくさんのご利益をいただくことができる珍しいお寺です。

明治時代後期の建物で、特別なお客様のみをお通しする上書院から眺める名勝庭園(浄土苑)は、とても素晴らしく、毎月17日午前のみ一般公開しています。映画のロケ地にもなっています。

ブランディングセミナー「楊谷寺、この8年」まとめ

楊谷寺1200年の歴史(創建~)

令和4年9月25日(日)に長岡京市商工会文化交通業部会主催、長岡京市市政50周年記念セミナーが京都府長岡京市の「楊谷寺」にて開催され、部会理事の一人でもある楊谷寺の第31世住職日下俊英様より、住職就任以来8年間の取り組みをお話しいただきました。

1200年の歴史から始まり、観光バスが日に何台も押し寄せた絶頂期、信者の高齢化などから参拝者が激減した危機的な状況を乗り越え、花手水のお寺として全国から観光客が訪れるまでに回復する道のりを、他では聞けない『経営者』の視点で語っていただきました。

このパートでは1200年前の創建に始まり、『西の清水』と謳われた江戸時代、観光バスが日になんども到着し、公園墓地を開設した平成初期ころまでのお話です。現住職が楊谷寺にいらっしゃったのもちょうどこの頃だったそうです。

楊谷寺1200年の歴史(平成~)

このパートでは信者の高齢化や阪神大震災を代表とする大災害などにより劇的に参拝者が減少した状況、そんな中での住職就任のお話しをしていただいています。

具体的な取り組み

このパートでは参拝者が激減する中で住職に就任し、これまでの丼勘定を見直して、会計的な部分や経営資源など詳細な現状分析を始め、ユーザー視点での改善をすすめていったことについて語っていただいています。

大きく動き出したのは、ご祈祷の際に対面でお話を聴くということでありました。「何を求めてここに来たのか、観音様にどうしてほしいのか」と生の苦しみを掬い取り、心の荷物を降ろして帰ってもらう。そこに日下氏が一般人に門戸を開き、人間性を培う場として、時に寺の敷居が高いことを憂慮しながらも、それを打ち砕こうとする強い根本姿勢がありました。楊谷寺は、僻地にあり交通の不便さがあるが、そこにこそ世俗から離れ、今一度自らを客観視し、人間性を培うという潜在的価値を見出したのです。

観光寺院化へ向けて

このパートでは観光寺院化へ向けて実行された様々な取り組みを紹介していただいています。共通するのはユーザーをしっかりと観察すること。そして自らの強みも客観的に評価することでした。

参拝のきっかけづくり

このパートでは、参拝のきっかけづくりに際して「強みの強化」に取り組まれ、「あじさい+〇〇」など、1キーワードでは先駆者に遅れを取ってしまいそうになることを複合キーワードにすることで他者に真似できない独自の強みに進化させることに成功されています。

伝統を守りつつ、過去のイメージから現代的イメージへと。女性に支持される「押し花御朱印」は大ヒットとなりました。SNSでもフォトジェニックな季節の花々が浮かぶ「花手水はなちょうず」が注目を集め、それを観光書籍や各メディア、クチコミといったツールを駆使して、興味の連鎖を実現しています。

それでもなお果敢な挑戦を続けるだけでなく、自身を省み増長し尊大になっていないかを点検されています。動き出した事業でも、これはダメだと判断したら、やめる。やめる勇気をもてるかどうかが優れた経営者かどうかの分かれ道になると思いました。撤回を恐れない柔軟な姿勢は是非見習いたいものです。

8つの行動指針

『8つの行動指針』について。これらの指針はお寺特有のものではなく、BtoBやBtoCといった一般的な事業を営む場合にも重要な指針として参考になりそうです。

  1. 社会の情勢、人々の考え方を常に観察する
  2. 柔軟な姿勢で違うと思ったら取り消す
  3. ソフトなイメージできっかけづくり
  4. なるべく自分達で行う
  5. ご縁を大事にする
  6. 試行錯誤を繰り返す
  7. 自身を省みる
  8. 変化を恐れない

懇親会の様子